プロ初勝利をあげた思い出深い水面で躍動した。若松ボートの「BOATBoy CUP」は4日、優勝戦が行われた。インから発進したのは1号艇の山口裕二(36歳=長崎)。1マークを先制。旋回が流れすぎて、2コースの2号艇に差しこまれて並ばれたが、2マークで渾身のハンドルさばきで差し返して先頭奪取。見事な逆転劇で優勝を飾った。当地では初V。「水神祭の思い出が強く残ってる好きな水面。勝てて嬉しい」と笑みをこぼした。
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決してラクな戦いではなかった。優勝を決め、ピットに戻ってきた直後も、まだまだ山口の表情は硬いままだった。だが、カポックを脱いだあと、近くに松江秀徳(佐賀)が歩みよって祝福の声をかけると、表情は一気に緩んだ。
そして2人はがっちりと握手を交わした。
「松江選手にいろいろとアドバイスをもらいました。ガッカリさせるようなことがなくて良かったです」と山口。支えてくれた同地区の松江が見守る前で、きっちりと結果を出して見せた。
優勝戦はコース取りから激しかった。動いてくる大嶋一也をガードしてインから発進した白カポック。起こし位置は極端に深くは流れ込まなかった。しかしスタートを守りすぎた。コンマ22。5番手タイ。「スタートはヤバかったですね」。2コース大庭元明のほうが勢いよく前に出ている。外からは大須賀友がマクリにきている。山口は慌てるように、とにかく1マークを先に回った。ただ旋回角度も急で、余裕もなく、1マークをオーバーターン。そこに大庭の差し。バック直線、完全に捕まった。有利な位置は大庭。隊形は2-1。
だが、山口がここから魅せた。2マーク先マイは2号艇。5号艇も最内を突っ込んできた。この2者をいかせて、まとめて全速差し。これが素晴らしかった。2本の引き波を越え、大庭の懐までグサリと突き刺さった。「2マークは周りの動きがよく見えていたと思います」。冷静に他艇を見て決めた会心の一手だった。 先に回った大庭が、驚くように山口のほうを見た。形勢がひっくり返った瞬間だった。2周1マーク、今度は山口が先取り。大庭の差しは許さず、単独先頭へ。勝負アリ。
ヒヤリとする場面もあったが、手に汗握る攻防を制した。
若松水面では初優勝。「水神祭の思い出が強く残ってる好きな水面。勝てて嬉しいです」と話して目尻を下げた。まだ新人だった山口が記念すべき1勝をあげた場所。偶然にも、ちょうど今と同じ時期のレースでだった。それから18年。今度は優勝という嬉しい記憶を刻んだ。
オール2連対V。成績だけ見れば安定しているようにも見えるが、本人は必死だった。「今節は結構、上位とエンジン差がありました。いっぱいいっぱい。予選も着を拾いながらという感じでしたね」。そう言って、息をはいた。ただ「それでも、足の不安がありながらも優勝戦は競り勝てた。それが嬉しいし自信になります」と満足そうに話して、視線は前を向いた。
今期は絶好調。勝率は7点に迫ろうかとしている。キャリアハイの成績を出すかもしれない。「この要因ですか? 特にないと思います。一走一走とにかくFを切らず、ベストパフォーマンスをしようと思って走っています」。そうして今の勝率が出ていると山口は控えめに言う。“積み重ね”という言葉を山口は大事にしているようだった。SG・GI常連選手に比べると、ネームでは目立たないが、コツコツと走り続ける36歳。そこには仕事人の顔があった。
「事故に気をつけて、今後もこの調子をキープできればいいなと思います」
これからも変わらず。目の前の一走一走に力を注ぐ。結果は、自然とついてくる。
【次走予定】
大村 GI九州地区選手権
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(文:吉川)
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