雨が降ろうが何が降ろうが、青い炎は消えなかった。若松ボートの「ビッグベアーズカップ争奪夜王シリーズ第4戦第2回若松スピード王決定戦」は29日、雨の中で優勝戦が行われた。カド4コース、思いきり後方まで引っ張って発進した4号艇・秋元哲(さとる・27歳=埼玉)が、コンマ06の強烈なトップスタート。内側の抵抗にもひるまず、豪快にマクりきって突き抜けた。決して有利には見られなかった一戦。だが、あきらめずに挑んだ男の決意がそこにあった。
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カド4コース。誰よりも後方へ下がって、スタンバイした。パワーをためるように助走距離をとった。準備万端。
いざ発進。
スタートタイミングはコンマ06トップスタート。助走距離を取ったうえに、この鋭いタイミング。一気に内の艇を抑えこんでいって、1マークをトップで回った。
「(出走前から)スタートいってマクろうと決めてました。差しは考えてなかったです」。一択。腹を決めてレースに挑んだ男の、気迫みなぎる決意のマクリだった。
1つ内にいた3コースの長田頼宗がコンマ09を入れて抵抗する動きを見せたが「(秋元は)止めることができなかった」と舌を巻き、2コースの打越晶も「あのスタートは仕方ない」と脱帽した。
すべてを抑え込んで、バック直線で単独先頭に立った秋元。その内から、するすると6号艇の宮武英司が不気味に艇間を詰めてきていた。思い返せば、前々節の平和島優勝戦も同じようにバックで先頭に立ったように見えたが、内から伸びてきた6号艇の選手につかまり、2マークでさばけず大敗した。そんなこともあったが、今回の秋元は冷静に6号艇の艇先が届く前に締めて、2マークを先取り。スピードモンキー決めて、後続を突き放した。近況、優勝戦惜敗が続いていたが、今日は負けない。見事な走りで今年初優勝を掴み取った。
レース後、若松名物ビクトリー花火の祝福。当地ではこれが初優勝。しかも初優出だった。
今まで、当地では苦戦した。まったくといっていいほど成績が残せなかった。前検日に体を痛めてそのまま欠場へ、なんてこともあった。だが、そんな過去がまるで信じられないほど、今節は活躍した。予選トップのシリーズリーダー。地元エース瓜生正義も抑えた。「これまで若松ではスタートが合わなかったです。でも今節は、前検日からすごくよく合っていました」。そう言って秋元は嬉しそうだった。連日のトップスタート連発に、目を見張った人も多いだろう。
ただ、秋元は決して満足しない。優勝した今節は100点かと尋ねると、首を横に振った。「“70点”くらいです。一節間通じて自分の甘さ、弱さが出ましたから。特に1マークです」と言い表情を引き締めた。たしかに準優では旋回ミスでインから2着に敗れたりもあった。
優勝を決めた後のピットで、反省の弁。慢心はない。
次走は桐生一般。その後、大村一般、地元戸田GIと続く予定。現在4場所連続優出中と快進撃を見せているので、優出記録をどこまで伸ばすかも1つの楽しみだ。
「次も1走ずつ頑張ります」。 秋元はそう力強く言葉を残して、次の戦いへと向かっていった。
103期。まだ選手として未完成。だから、これからまだまだ進化できる。
残り“30点”が揃った時。この選手はとんでもない高みにいるような気がする。
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(文:吉川)
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