登録番号の1番上が1番強かったーー。若松ボートの「匠シリーズ第8戦若松かっぱくん杯」は18日に優勝戦が行われた。1号艇の鈴木幸夫(59歳=愛知)がインからコンマ05のトップスタートを踏み込み、1マークを先マイ。他艇を全く寄せ付けることなく逃げきって一人旅。1番人気に応え、約3年3ヶ月ぶり、通算では69回目のVを飾った。ベテランが集まった今シリーズの中でも最古参だったが、後輩たちを抑えて存在感を示した。
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「本当に嬉しいです。今節、若松ボートを楽しませてもらいました」
約3年3ヶ月ぶりの美酒を味わった鈴木の目尻は自然と下がっていた。嬉しさと、達成感だった。
落ち着いたコース取りで、枠なり発進となった優勝戦。鈴木は1号艇。十八番のイン戦。スタートはコンマ05。切れ味鋭い踏み込みを見せた。白カポックだけ抜けているような見事なスリットだった。フライングの危険もあるが、放ったりもしない。かといって無謀な突っ込みでもない。このベテランは至って冷静だった。「ちょっと早いかなと思ったが、フライングはしてないと思っていました」。確信があった。見事だった。
1周1マークは、もちろん誰よりも早く旋回。気合いの入ったインモンキーでバック直線へ突き抜けた。「集中していこうと思っていて、そのようにできました」と鈴木。誰の差しもマクリも許しはしない。イン屋・鈴木、渾身の逃げだった。
2マークも先取り。あとは、目の前に誰もいない若松水面を2周走って、ゴールイン。1番人気を裏切らず、観衆の期待にも応え、文句なしのレース運びでVを果たした。
ウィニングランが始まるのを大時計付近で待っていると、ゆっくりと白カポックが手を振りながらやってきた。「鈴木さーん!」、「おめでとう!」と声が飛んでいた。鈴木より20歳か30歳は年下であろう若いファン達からの声だった。
年を重ねても、鈴木のように元気でありたいと思った人もいたかもしれない。それほど、このオジサンは格好良い。今節は堂々の予選トップ通過。大崩れなし。1回4着があるだけで、あとは1,2,3の数字を並べた。「エンジンのおかげですね。どこをとってもいい」と、相棒53号機を褒めた。確かに、このモーターは噴いている。今後も要注目になるであろう。ただ、それを操って、この成績をたたき出した乗り手の鈴木もやはり凄い。還暦を迎えようとする人が簡単に出せる成績ではない。名手・鈴木だからこその快進撃であった。
表彰式や写真撮影などを終え、当地を後にする鈴木の表情は、まさに満足感に満ちあふれていた。気分も良く、次戦は地元蒲郡に向かう予定である。
昭和53年デビューの43期生。“競艇”時代から38年。
雨が降ろうが風が吹こうが、突き進んだイン屋の道。多くの名勝負を生んできた。SGもGIも取った。B級暮らしもあった。積み上げたピン(1着)の数は、もうすぐ2200に到達する。
来年8月に60歳。
だが、まだまだその走りで、イン屋の魂で、ファンを楽しませてくれるのだろう。
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(文:吉川)
着 | 枠 | 登番 | 名前 | タイム | 決まり手 |
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枠 | スリット | ST |
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