「お世話になった全員に、この優勝を伝えたいです」。若松ボートの「山口シネマカップ争奪男女W優勝戦 」は31日に最終日を迎え、12Rでは女子の優勝戦が行われた。2コースから発進した2号艇の藤堂里香(28歳=福井)がゼロ台スタート決め、イン先マイの渡邉優美を差して捕まえ、2マークをトップ旋回。リードを広げて1着ゴール。待望の自身初優勝を飾り、レース後は目を潤ませた。
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新たな星がまたひとつ輝いた。
今年の1月大村。優勝未経験のメンバーが集まったレースで、藤堂は優出した。だが、その戦いで栄冠をつかんだのは渡邉優美だった。藤堂は渡邉と1秒差の2着に泣き、初Vを逃した。渡邉のその後の活躍は凄まじく、今期勝率は6点台後半、A1級昇格も視界に入れ、一気にスターへの階段をのぼりはじめている。
その渡邉に置いてはいかれない。
今度は藤堂の番だ。舞台はこの若松水面。
優勝戦、イン先マイの渡邉を、2コース藤堂の差しが捕まえた。「スタートは全速でいった分、内(渡邉)より少し伸びた感じがあった」。1マーク先取りは渡邉に許したが、藤堂の伸びとマクリ強襲を警戒したか、渡邉の旋回は外に膨らんだ。そこに藤堂のボートがグサリ。デビュー9年、初Vへの扉をこじ開ける魂の差しだった。
バック直線で先頭に立ち、2マークを有利に先マイ。「平田さんの差しが怖かった」。2番手追走してきた平田さやかに意識を取られることもあったが、それでもきっちりと封じて3周をトップで走りきりゴール。待望の初優勝の瞬間を味わった。
2007年初出走の101期生。デビュー節の三国でいきなりフライングを切ったりと苦いプロ生活の始まりだった。それから少しずつ力をつけ、ついに今回初優勝。「デビューからここまで、あっという間でした。本当に嬉しい」と藤堂。人は夢中になると時間の経つのを忘れ、早く感じる。藤堂があっという間に感じるのは、レーサーという仕事に懸命に夢中に取り組んだ証なのだろう。今はA2級昇格してもおかしくないくらい力はついてきて、今後の成績にも期待は高まる。
ただ、まだ大きなことは考えない。「今年の目標はスタート無事故です。(Fなどで)休まず、もっといっぱいレースを。レースに行って、もっと勉強したいですから」。Vを経験しても、慢心など無縁。貪欲に学ぼうとする28歳がそこにいた。
誰に一番に優勝を報告したい? と尋ねると「これまで練習に付き合ってくれた先輩後輩、お世話になった全員に、この優勝を伝えたい」と嬉しそうに話した。
帰り間際、関係者からオフィシャルの色紙にサインを頼まれた藤堂は、サインの横に、星のマークをキュキュッとマジックで書き込んだ。よく見ると、優勝戦で来ていたウェアにも、小さな星のデザインが数多くあった。
今は小さいかもしれない。だがこの北陸の新星は、これからどんどん大きく、輝きを増していきそうである。
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(文:吉川)
着 | 枠 | 登番 | 名前 | タイム | 決まり手 |
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枠 | スリット | ST |
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