熱戦を繰り広げた若松ボートの「GIIIビートル杯」は5日に優勝戦が行われた。インからスタートした1号艇・吉田俊彦(37歳=兵庫)が1マークを先マイ。そのまま先頭に立ち、2番手からスピードターンで追ってくる桐生順平も冷静に封じて1着ゴール。オール2連対の見事な成績で、若松水面では初の優勝を飾った。今年は3回目V。
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出走直前。各選手が自分のボートに次々と乗りこんでいく中、吉田は違った。自艇の前で頭を下げ、そのまま止まる。ジッと静かに動かない。
周りに惑わされない自分のペースがある。それを守る。ヘルメットの中は見えないが、呼吸を整えたり、集中力を高めたり、いろいろとあるのだろう。じっくりと、時間をかける。そうしてボートに乗り込んだ吉田。準備は整ったーー。そんな感じだった。
いざ発進。
静から動へ。
勢いよくピットアウトした1号艇の吉田は、枠番通り1コースを守る。そこからコンマ13の好スタートを決めた。内3艇がほぼ同じ様なタイミングで抜け出したスリット隊形だった。
「スタート練習で、2号艇の桐生君が良かったので、これは後手を踏んだらいけないと思っていた。同体のスタートができて良かった」
今節はスタートに不安を残すコメントが目立った吉田だったが、それでも、きっちりとここ一番ではスタートを決めてみせた。そうして1周1マークに真っ先に突入。「ターンだけ外さず回れれば」。そう気をつけて、ターンマークに集中して旋回。吉田のイン戦はスピードもあり、安定感がある。今日も、綺麗なインモンキーと航跡がそこにあった。
対抗1番手だった2コースの桐生は一瞬マクリにいくようなそぶりも見せながらも、差しに構えた。だが、吉田の懐に差しは入らず。颯爽とイン旋回決めた吉田が、バック直線で先頭に立った。1艇身ほどリード。そのまま2マークも先取り。
態勢は決まった。ただ、ここから破格の旋回能力をもつ桐生が、スピードターンで追いかける。昨夜の準優でも、桐生は2周目で先頭艇を、爆撃機のごとき破壊力で粉砕する逆転劇を見せていた。この男が2番手から追撃してくることに、先頭の吉田もさすがに後ろが気になったという。「テクニックは彼のほうがいい。最後まで気を抜かず走りました」。10年以上A1級を張り、記念でも活躍を見せる吉田にそんなセリフを言わせる桐生は本当に凄いのだが、吉田もまたターンテクニックは折り紙つき。なんといっても、今節9戦6勝、2着3本、抜群の安定感で予選トップとなり勝ち上がってきた男なのである。優勝戦も冷静に1つ1つのターンをクリアして、追いかけてくる若き才能の逆転は一切許さなかったのだった。
1着吉田、2着桐生。思い返せば、初日ドリーム戦もこれと同じ決着だった。吉田に始まり、吉田に終わった。そんな一節であった。
「ホッとしています」
ウィニングランから帰ってきたウィナーは、開口一番そう言って頬を少し緩めた。スタートの不安、桐生という存在、1番人気のプレッシャー、どれもはねのけた男の安ど感があった。
11月1週目。新期に入って早々に幸先良くV。嬉しさもあるだろう。“いい期初めになった”といった感じで、うなずいた。
前期は戸田でフライングを切ってしまい足かせをつくったりして、勝率も下がった。吉田の勝率が近年、7.48→6.97→6.69→6.49と右肩下がりになっていっているのが気がかりだ。GIやSG参戦が多く、そう簡単に着を取れないからからかもしれない。
ただ、今回の若松Vがきっかけとなって、また復調に期待したい。
吉田には周りに惑わされぬ自分のペースがある。巧みなハンドルテクニックがある。
次は蒲郡のGI周年記念に向かう。「GIも一生懸命走ります」。そう誓う言葉には力が宿っている。
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(文:吉川)
着 | 枠 | 登番 | 名前 | タイム | 決まり手 |
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枠 | スリット | ST |
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