颯爽と先頭を駆け抜けたのは、赤舟を操る白い勝負服だった――。赤色の新ボートが初降ろしとなり話題を呼んだ「日本トーターカップ」の優勝戦が8日に行われ、人気を背負った1号艇の鈴木博(44歳=埼玉)がインコースから逃走一気。進入で大嶋一也の前付けがあったものの、コンマ14の好スタートと52号機の力強い舟足を武器に押し切り、嬉しい美酒を味わった。今年は初優勝、当地では3度目のVとなった。
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ここ1年ほどで、若松の1コース1着率は50%を超えている。
特に優勝戦はその強さが際立つ。シリーズリーダー格が1号艇に座るので勝率が上がるのは納得だが、それにしても今年1月〜5月に行われた若松優勝戦18回のうち、15回でインの1号艇が勝利を挙げて笑っているのである。他場の優勝戦などを見ていると、白カポックがコロリと負けて高配当が飛び出すシーンもあるのだが、ここ若松の最近の優勝戦は、とにかく1号艇=インが堅い。
そんなポールポジション。今節は鈴木が手にした。
正直、開幕前はマークしていなかった選手。だが、フタを開けてみれば快進撃だった。前検タイム2位を叩き出した52号機はホンモノで、直線の伸びも旋回系統の足も力強い。初日第1走目、風速10mと大荒れの水面の中で、道中で先頭艇を抜きあげて逆転1着。1人だけ存在感を光らせていた。2日目からも1着2着を次々と並べていく。圧巻だったのは3日目6R。インの強い若松水面で、大外6コースからマクリを決めて内艇を一掃したのである。破壊力、まさに超抜。ベテランの鈴木が「選手になって初めての足」と言い切る。もう、彼の機力の前に敵はいなかった。
1枠で迎えた優勝戦。大嶋や大神康司の前付けなどが予想され進入に不安要素はあったものの、オッズは鈴木が1番人気。主要スポーツ紙も◎に押し、「鈴木」の二文字が紙面に躍っていた。
本番、やはり大嶋はいつも通り動いたものの、1号艇の鈴木、そして2号艇の長野壮志郎も固い意志表示で枠を主張。これで大嶋は3コースまで。大神は枠番通り6コース回り。鈴木は誰にもコース譲らず、毅然とインを守り切った。
強烈52号機に乗って、若松の1コース。もう鬼に金棒である。それに、この日は風や波がほとんどない競走水面。起こし位置はさほど深くもならず、S展示と大きく変わらなかった。「夜のスタートが難しい」と漏らす時もあったが、ここ1番ではコンマ14を決めた。好ショットだ。この足なら十分なスタート。そこからグイッと艇を伸ばして1マークを先マイ。体を内側にひねりながらインモンキー。2コース長野や3コース大嶋はそれぞれ差しが入らず後退。鈴木がバック直線へ抜けると、後続に早くも3艇身以上の差をつけて先頭。そのまま、2マークもトップターン。2周目、3周目と、あとは鈴木の目の前には輝くVロードだけ。悠々とゴールラインを駆け抜けていったのだった。
オール2連対V。レース後、鈴木は嬉しそうに右手をあげてウィニングラン。水面際に集まったファンの祝福の声に応えた。
優勝は昨年9月以来。でも近況は絶好調。4月から平和島、戸田、常滑、大村と連続優出しており、今回の若松で優勝と文句なし。右肩上がりの調子で、今年2度目のVはそう遠くないのかも。
次走は戸田のGIII戦へ出場予定。企業杯でA級も多いが、桐生順平と共に地元の意地を見せてくれるだろう。今年でプロ生活25年目。まだまだ元気で好調なベテラン鈴木が、今後も存在感を示してくれそうだ。
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(文:吉川)
着 | 枠 | 登番 | 名前 | タイム | 決まり手 |
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枠 | スリット | ST |
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