春、笑顔咲く! 若松ボートの「ビッグベアーズカップ」は21日に優勝戦が行われ、4コースからスタートを切った4号艇の佐藤博亮(30歳=愛知)が1マークで最内を差し抜けて1着。デビュー5年5ヶ月。フライングで苦しんだ時期も乗り越え、18回目の優出で待望の初優勝。福岡で桜が開花したこの日、若松水面にも佐藤の笑顔が咲いた。
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21日。福岡市で桜の開花が発表された。平年と比べると2日早かったとのこと。暖かくなってきて、いよいよ春らしくなってきた。
それと同じ日。春生まれ(4月1日)の佐藤がついに決めた。
優勝戦の進入は123/456。向かい風8m、波高8cm。安定板もつく荒れ水面。そんな中、佐藤の走りが光った。
注目の1マーク。先手を打ったのはインの1号艇だったが、大幅に横に流れていった。実況アナが「懐があきました!」と叫ぶ。この時、差し上がってきたのは2号艇でも3号艇でもなく、4号艇の佐藤だった。荒れ水面の中、冷静に展開を見ながら、3本の引き波を越え、ターンマークのギリギリを差し抜ける好旋回の一撃。「波風はあったけど、いい足でした」。
青い衝撃に、水面際の観衆はどよめきと歓声があがっていた。
バック直線で単独先頭。
続く2マーク。2番手から逆転狙う1号艇が内側に切り返して突っ込んできた。しかしこれを佐藤が握って交わして、大きく突き放し勝負アリ。あとは先頭を駆け抜ける。周回を重ねて、独走でゴールラインに飛び込み、待望の勝利となった。
長かった。113期生としてデビュー。中田達也(福岡)とともに、将来を属望され実戦へ。武器は鋭いスタート。ただ、フライングが多発した。成績が上げってもフライングで足かせを作り、牙を抜かれて、思うようにいかない。勝率6点台を取った次の期に、3点台の勝率になることもあった。
それでも、前期は6.24。今期も6.11で若松入り。安定感は出てきた。今節は3日目に舟券から1度だけ外れることはあったものの、それ以外の9走はオール3連対を守って見せた。4日目5日目はトップスタート連発。準優の激戦となった2番手争いを制した道中の“粘り強さ”も良かった。
優勝には5年5ヶ月がかかった。この期間は「長かったですね。やっと出来て嬉しいです。最近は下関のこともありましたから」と言う。
今年1月末の下関のルーキーシリーズ。優勝戦1号艇に乗る活躍。大いに期待された。ところが、このビックチャンスに痛恨の6番手スタートで、2コースの艇にマクられて波の中に消えた。その後、自身のTwitterには「舟券買って頂いた方本当にすいませんでした。。。。なぜなんだ。」と書き込んだ。悔しさを滲ませた。そんな思いも、今回の若松でだいぶ救われただろう。
レース後は周囲に祝福され、終始笑顔だった。これまでの敗戦も、味わった悔しさも、きっと無駄じゃなかった。それがあったからこその、笑顔だった。
ピットで表彰などを終えたあと、水神祭が行われていた。水面に落ちた後、顔を出した佐藤は、左手を高々と若松の夜空に突き上げ「よっしゃー!」と叫んだ。優出18回。悲願の初優勝がここに達成された。
1つの目標であったVを挙げ、これからはさらに上を目指す。「記念に多く出て、名前を覚えてもらいたいです。SGも出たいです」。そう力強く意気込んだ。
次走は鳴門ルーキーシリーズのあと、4月にはGIレース出場(自身4度目)も決まった。場所はあの下関。だが、もう今の佐藤にとっては過去の思い出だろう。きっと大丈夫だ。
桜が咲いた日。佐藤も初優勝を経て新たな一歩を踏み出す。「(選手としては)まだ全然です。蕾です。そう書いといてください」。そう言って控えめに笑みを見せて、若松ピットから帰路についた。
翌日、佐藤は自身のTwitterにV報告をした。ファンから祝福のリプが多数寄せられていた。日光のように温かかった。これから上を目指す男にとって、これもきっと大きな力となるのだろう。
芽吹いた蕾はひらく。
そしてきっと、満開になっていく。
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(文:吉川)
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