若松ボートの「アサヒビールカップ」の優勝戦が28日に行われた。スリットはほぼ横並びで、1号艇の高野哲史(26歳＝兵庫)が1コースから先マイ。差しを狙ってくる他艇を寄せ付けず、堂々逃げ切って快勝。初優勝から約2年、幾度も優出を重ねながらも、Vの縁だけには恵まれなかった男が、この日待望の美酒を味わって笑みをこぼした。来月地元水面で行われる若手の大舞台へ向けても「リズムアップになります」と語った。
＝ ＝ ＝ ＝ ＝ ＝ ＝ ＝ ＝ ＝ ＝ ＝ ＝ ＝ ＝
スタート展示は132/456だったが、本番はその通りにはならなかった。
ピットアウト直後、4枠の渡邊雄一郎がインまで強奪できそうな抜群の勢いで飛び出してきたのである。S展は穏やかに外にいたが、ここ一番でスロー域に参戦。まるで隠していた刀で切りかかるかのように。これに対し、1、2枠の2艇は枠番コースを守ってみせたが、意表を突かれペースを崩されたようだった。
本番の隊形は、124/356。
コース取りからいきなり攻撃を受けた高野。「これで起こし位置が今節まったく練習したことのない位置からになりました」。26歳の心に動揺が生じていた。その点では渡邊の急襲は成功といえた。
それでも、高野はしぶとかった。これで潰れることはない。練習していない位置からだろうと、コンマ06の鋭いスタートを決めたのだ。トップスタートタイだった。想定外の事態でも、立ち遅れるような無様なことはしない。「もうスタート分からなくなって、横に合わせただけですよ」と本人は苦笑するが、そこには、負けれない負けたくない意地を持って、大時計と勝負した白カポックがいた。
スリット後はほぼ横並び。こうなれば、高野がイン有利に1マークを先制。スピード十分、それでいてターンマークすれすれを上手く旋回。綺麗なインモンキーがそこにあった。「天気の影響で回り過ぎてましたね。感触はそこまで良くはなかったです」というモーターだったが、乗り手高野と組めば、大きな問題はなかった。
バック直線に抜けてみれば堂々単独先頭。そのまま1周2マークもトップターン。後続の番手争いを尻目に、あとは周回を重ねていってゴールイン。今年は初、通算では2回目の優勝を飾ったのだった。
高野のV回数が、まだ2回目というのが意外だ。
一昨年、24歳で自身初Vを経験したが、その後、2回目まで時間を要した。某A1級強豪らも目を見張る高いターンテクがあるのに、頂点だけは一歩届かない。「この2年、優出は結構したと思うんですけど、なかなか勝てなかった」。優出通算回数は20回を超えていた。ただただ、もどかしさだけが募った。
だが、それも今回で発散。待望の美酒を味わうことができたのである。
“連敗”からの脱出に成功して精神的にもラクになって、ここから次々とVを重ねても何ら不思議ではない選手。次走は江戸川一般へ。その次には地元尼崎でGIヤングダービーの大舞台が待つ。
「(GIの前に)この優勝で勢いが出て、リズムアップすることができました」
加速する26歳。来月、走り慣れた地元水面でどんな活躍を見せてくれるか。目が離せなくなってきた。
＝＝＝
※この文章を他のホームページ等へ、無断転載することを禁じます。
(文：吉川)
| 着 | 枠 | 登番 | 名前 | タイム | 決まり手 |
|---|
| 枠 | スリット | ST |
|---|
〒808-0075 福岡県北九州市若松区赤岩町13−1 TEL 093-791-3400